AI(人工知能)とデバイス(スマホ、パソコン、タブレット)の関係で焦点になるのは次の6パターン。
- オンラインの生成AI(クラウドAI)
デバイスはハイスペックのほうが動作は速い
- オンラインでAIに頼める生成以外のサービス(クラウドAI)
デバイスのスペックはあまり関係ない
- デバイスに内蔵する部品とソフトで生成AI(エッジAIといってオフラインでも操作可能)
2024年ではオンラインで生成するほうが精度は高い
- デバイスに内蔵するAIがいろいろ整理してくれる(エッジAI=ローカルAI)
執事のような感じでユーザーの身の回りをいろいろ整理したり通知してくれる
- AIによる機械学習(機械自身が学習したり判断していく機能)
スペックが高めのPCで行うのが基本
- 自分でAIを使いながらソフト開発
ハイスペックのPCで行うのが基本
上記1~4はユーザーがAIにやってもらう動作(=ユーザーは消費者)、6はユーザーがAIを使ってソフトを開発すること(=ユーザーは生産者)、5はどちらの要素も含んでいます。
同じ価格帯のパソコンとスマホを比べるとパソコンのほうが性能が高い傾向がありますので、AIについて高い動作速度や精度をもとめるならパソコンのほうがおすすめ。
スマホは小型化している分だけコストがかかります。また高度に処理できるパーツを使用すると内部で高い熱が発生しますが、スマホのような薄くて小さい端末だと効率的な排熱が難しいのです。
やはり排熱が最強なのは大型のデスクトップPCです。


私の自作PC(部品の間隔が広いから通気性が高いし大型の冷却ファンで冷やせる)
タップできるもくじ
AIとパソコン【クラウドAI】
AIの機能は、画像系、音声系、空間系、言語処理系、異常検知系、探索系、予測・シミュレーション系、学習系、それらを複合的に組み合わせた系統などさまざまな系統があります。
AIができることの例
- 画像、動画・アニメを生成する
- 画像や動画の細部を変える
- 文章を生成したり添削したり要約する
- 宣伝文や記事タイトルの例を条件に沿っていくつも挙げる
- 音声生成AI(AIが声優や歌手の声データをもとに音声を生成する)
- 人間の話し相手・チャット相手になってくれる
- 人間が描いた簡略的な絵から精度の高い絵に変換する
- 食材を見せると料理レシピを提案してくれる
- 人間の希望に従って資産を運用する
- 将棋のようなボードゲームについて発展や変化のパターンをシミュレートする
- ゲームや将棋の攻略法をプレイしながら教えてくれる
- クイズや試験問題を解く(文章問題はもちろん、画像系や音声系の問題もそれなりに解ける)
- 「人間はなぜ生きるの?」みたいな哲学的・抽象的な問いに対しても返答してくれる(明確な答えが出るとは限らない)
- お掃除ロボットや自動冷房など家電を空間に応じて自動で動かす
- ハイスペックのパソコンやスマホがパフォーマンスを自動でコントロールする(常に高出力である必要はない)
- ユーザーが話した言葉を文字として表す
- スポーツ中継、映画、ビデオ通話で流れる外国語音声をリアルタイムで日本語に翻訳する(日本語へのリアルタイム翻訳で高精度にするのはまだ難しい)
- ストリートビューやカメラ映像の解析をもとに自動車を自動運転する(実用化や法整備はまだまだ…)
↑おもに個人向け機能(表示は個人のデバイスで可能)、↓おもに業務用機能
- 業務レベルの顔認証(オフィスやテーマパークの出入り口に設置すれば警備員を配置する必要性が薄れる)
- プログラムを書いたり添削する
- 天気を地域ごとに高精度で解析し、小売店の発注数量に反映する
- レントゲンを画像解析して病気を早期に指摘する
- 工場の生産で異常を検知したら生産を止める
- コールセンターで自動返答する(AIのほうがクレーマーに対応しやすい?)
- 農業や畜産の生産で最適な配合や水やり、日照時間などを指摘する
↓大手サイトでよく見る機能
- YouTubeやネットフリックスでユーザーの視聴データや最近の人気ランキングからおすすめ動画を示す
- ネット通販でユーザーの購買データや最近の人気ランキングからおすすめ品を示す
ちなみに有名な漫画やアニメのキャラに関して画像や動画の生成を頼むと拒否されることがあります。
こういう著作権を守るための自動判定も一種のAIといえるかもしれません。
オンラインの生成AI
ここからは冒頭で示した6パターンについてわかりやすく解説していきます。
まずは「オンラインの生成AI」について。
これは企業が設置した大規模な設備(サーバー、データセンター)について、一般ユーザーはインターネットを経由して利用するものです。こういうネット経由の利用はクラウドAIと呼ばれます。
サーバーとは供給側(基本的に企業)の大型コンピュータのこと。データセンターとはサーバーを多数設置し、正常に稼働し続けられるように環境が整えられた施設のこと。

リクエストとレスポンス
たとえばユーザーが「警察庁のページを見たい」とPCにリクエストすると、そのページデータがサーバーからレスポンス(応答、反応)されるように、「画像を生成して」とリクエストすると、サーバーが処理・生成したデータを送ってくれるのです。
昨今ではGoogleやBingでの検索結果が文章として最上位に生成されることでも有名。
ユーザーとしてはネット環境さえあればオンライン型の生成AIを利用できますが、無料サービスよりも有料サービスのほうが生成する精度は高いです。
さらに無料の生成AIサービスは混雑したり利用回数に制限がつきやすいですが、有料サービスならのびのびと使えます。
NVIDIA躍進の背景
企業が生成AIに対応したサーバーやデータセンターを高い水準でつくるのはすごくお金がかかります。
とくに画像や動画を高度に処理できる部品を研究・開発するNVIDIA(エヌビディア)の売上および株価は爆上げし、株価の時価総額は世界1位になったのでした(2024年6月時点)。


私のグラフィックボード
NVIDIAの主力はGPUという画像処理を行うチップです。
GPUはグラフィックボードという部品の中核部にありますが、グラフィックボードは高価であるため、グラフィックボード自体を搭載していないPCはたくさんあります。
簡単な文章や画像を生成するならグラフィックボードがなくてもできますが、精度の高い画像や動画・アニメを素早く生成したいのならグラフィックボード搭載機種を買いましょう。
グラフィックボードは3Dのゲームやクリエイターソフトをやるのにも使えますよ(グラボがない機種で3Dをやると画面がカクカクする)。



GeForce搭載機種ならCPUはCore i5(Ryzen5)、メモリは16GBが最低ライン
生成AIは電力をそれなりに消費する
当たり前ですが、生成AIを使う際はサーバーもユーザー側のデバイスも電力をそれなりに消費します。
国際エネルギー機関(IEA) Electricity 2024によると、電力消費はGoogle検索1回で0.3Wh、ChatCPTへのリクエスト1回で約3Whとなっています。
スマホやノートPCで生成しまくっていると、まあまあのバッテリー消費になりますから使い過ぎにはご注意を。


オンラインでAIに頼める生成以外のサービス(クラウドAI)
クラウドAIは画像や動画の生成だけでなく、さまざまな事務処理も実行できます。
この分野で有名なのはロボアドバイザーでしょう。
ロボアドバイザーはユーザーの希望に沿ってユーザーの資産を自動的に運用します。日本だけでなく世界規模での運用も可能。
これは基本的に企業側のAI・プログラムが動かし続けるのでユーザーのデバイスのスペックはほとんど関係ありませんが、中にはデバイスのスペックが動作速度を左右するサービスもあります。
AIとパソコン【エッジAI】
次はエッジAIについて。
エッジAIは末端のデバイス(一般ユーザーのスマホやPC)に内蔵している部品(おもにNPUやAI使用に適したCPU)とソフトで生成しますからネット環境はなくても使えます。
NPU(Neural network Processing Unit)とは人工知能向けCPUのこと、CPUとはデバイスの中で頭脳の役目を果たす装置のこと。
内蔵する部品とソフトで生成AI
企業のサーバーやデータセンターに比べると、個人が保有するデバイスはそこまで高性能ではありませんからエッジAIはまだまだ発展途上です。
現状ではクラウドAIのほうが精度の高い生成ができるのです。
したがって、エッジAI搭載のPCを生成AI目的で買うのは現状ではおすすめしません。
しかしながら、AIやAI対応デバイスの分野は進化がとても早いため、エッジAI向けのおすすめPCが発売される日はそう遠くないのかもしれません。
Copilot+PCも発展途上
とくにMicrosoftは「Copilot(コパイロット)+PC」といってエッジAI搭載の次世代ノートパソコンを発売しました。
これまでパソコン向けのCPUといえばインテルかAMDという会社が開発したCPUだったのですが、「Copilot+PC」に搭載しているCPUはQualcomm(クアルコム)のSnapdragonシリーズとなっています。
Qualcomm SnapDragonはAndroidスマホではおなじみですが、PC界では新星です。したがって、Snapdragonシリーズ搭載のPCは現状ではプリンタやソフトの動作に支障が出る場合があります(とくにプリンタは厳しい)。
※Snapdragonシリーズの対応範囲はいずれ広まる見込み。インテルやAMDのエッジAI対応機も発売される見込み。
※Copilot+PCのメモリは最低16GB~。AIを快適に使うにはそれなりのメモリが必要です。

Copilot+PCにはAltの右側付近にAI機能を一押しで始めるボタンがある

Qualcomm社のSnapdragonシリーズのCPU
内蔵するAIがいろいろ整理してくれる(エッジAI)
たとえばスマホやパソコンを操作していると、自動でニュースやSNSなどの通知が示された経験はだれもがあるはず。
一昔前のWindowsパソコンだとMicrosoftからユーザーに対してアップデートするように指示が出ていました。

このような通知や事務処理(アップデート、設定)はユーザーがいちいち見たり操作することなく、もっとデバイスのほうで自動的に処理してくれるエッジAIもあります。
エッジAIはユーザーの希望に沿っていろいろやってくれるのですが、それに伴って中にはユーザーの個人情報が流出した事件もあったので、エッジAIに何もかも任せるというのは危ういかもしれません。
生成AIはクラウドAIにしてもエッジAIにしても現状では日本語より正しい英語で指示するほうが(和製英語は望ましくない)、精度の高い画像や動画が出やすいです。
英語は「She plays tennis at school」というように意味が単語ごとに区切られていますからコンピュータは認識しやすいです。
しかし、日本語は膠着語(こうちゃくご)といって「彼女は学校でテニスをやる」というような形で言葉と言葉が助詞とともにくっついていますからコンピュータは認識しにくいのです。
AIによる機械学習
囲碁というゲームでは世界一の人間プロよりAIソフトのほうが圧倒的に強いです。
さらに最先端のAIは東京大学の二次試験問題をそれなりの水準で解けます。
これは「機械学習」といってAIが既存の棋譜(囲碁や将棋の局面)や入試問題を大量に分析して進化していくから。
そう考えると、AIの本質は単に文章・画像・動画を生成するというより、事務処理や問題解決を人間に代わって高度に行っていくことにあるのかもしれません。

AIによる機械学習を一定以上の水準で行うには、グラフィックボードが搭載されている高性能PCで行います。
自分でAIを使いながらソフト開発
これまで紹介した内容はAIを使う側の内容ですが、AIそのものやAIを中心にソフトを開発する側にまわる人もいます。
これは以下のような試行錯誤が基本線にあります。
- 解決すべき課題や目標を掲げる
- 必要なデータを収集する
- データを可視化する
- データを標準化する(異常値を切り捨てる)
- プログラムを修正する
- プログラムをシミュレートする
AIを使いながらのソフト開発もGeForceシリーズ搭載のハイスペックパソコンで行うのが基本線としてあります。