Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)、Facebook(フェイスブック)、Apple(アップル)というアメリカ発の巨大IT企業はその頭文字をとって俗に「GAFA(読み方はガーファ)」と呼ばれます。
※Facebookは親会社の名前をMeta(メタ)に変えました。
※Googleの親会社はAlphabet(アルファベット)。
※GAFAMにTesla(テスラ)とNVIDIA(エヌビディア)の2社を足した「Magnificent Seven」という呼び方も英語圏ではあります。

日本ではGAFAにMicrosoft(マイクロソフト)を加えて「GAFAM(ガーファム、ガーファエム)」と呼ぶ場合もあります。
有料インターネット動画配信大手のNetflix(ネットフリックス)を入れてAppleをのぞいたFANGというくくりも有名。
GAFAMの世界経済への影響力は「消費者革命」ともいうべきレベルで目を見張るものがあります。
とくにGoogle、Amazon、Microsoftは多くの日本人にとってインフラと化しています。
そこでこのページではGAFAおよびGAFAM関連の話題の中でも「強み(すごさ)」「独占問題」「メリット」に焦点をあててわかりやすく解説します。
GAFAMには問題もありますが、擁護できる点も結構あります。
GAFAMの中でFacebookだけは日本社会への浸透度が弱いように国によってシェアにはズレがあります。
多くの日本人はインターネット空間では匿名発言を好むためFacebookは浸透しにくいんでしょう。

※2023〜24年ではMetaの株価は回復基調
GAFAはパソコンとスマホの両方に広く対応していますが、Microsoftはパソコン依存の比重が高いです(スマホ対応もあるが)。
MicrosoftはWindows Phone(スマホOS)が失敗しましたし、ハードウェアやソフトウェアもPC重視。
参考:時価総額1兆ドル突破企業(現在では1兆ドル未満になった企業あり)
- Apple
- Alphabet
- Amazon
- Microsoft
- Meta
- Saudi Aramco(サウジアラムコ)
サウジアラビアの国有石油会社
- Tesla(テスラ)
電気自動車メーカー
- NVIDIA(エヌビディア)
半導体の設計・開発、とくにグラフィックやAIに強い
タップできるもくじ
GAFAMはなぜ強い?【問題点にもつながる強み】
まずはGAFAMの主力事業や理念を簡単にまとめました。
現在の主力事業と有名商品 | 理念や使命(リンク先は各企業の公式サイト) | |
検索エンジンおよびネット広告 クラウド(GCP) Google Playのような手数料収入 課金(YouTube Premium) ソフトウェア(Android,Chrome) ハードウェア(Pixel,Nest) |
世界中の情報を整理してみんなに開放 | |
Amazon | Amazon本体によるネット通販 サードパーティへの手数料 クラウド(AWS) ハードウェア(Fire,Kindle,Echo) サブスク(Prime,Audible) |
世界で最も豊富な品揃えを誇る小売り拠点 |
Meta | SNSを通じた広告(Facebook,Instagram) ハードウェア(Oculus) メタバース |
世界中の個人をつなげるITシステム |
Apple | ハードウェア(iPhone,Mac,iPad) ソフトウェア 手数料収入 周辺機器(AirPods,Apple Watch) |
シンプルで洗練された体験を世界中に提供(明文なし) |
Microsoft | ソフトウェア(Windows,Office) クラウド(Azure) SNS(LinkedIn) 検索エンジンおよびネット広告(Bing) ハードウェア(Surface,Xbox) |
世界中の人々のさまざまな作業達成を支援する |
※上記表内の太字はその会社でとくに収益が大きい部門。
※一般ユーザーにとってはGoogleとMetaは無料で使う人が多くて、AmazonとAppleは有料で使う人が多いはず。無料系のほうが顧客対応は悪い傾向があります。
※GoogleとMetaはいろんな事業を展開していますが、収益源はネット広告にかなり偏っています。これに対してMicrosoftとAmazonは収益源が分散しています。Appleはその中間水準という感じでiPhoneの割合が大きめ。
※GAFAMの理念は基本的に「世界(地球上)」を意識しています。
OS | 端末 | ゲーム配信 | 決済 | |
Apple | iOS macOS iPadOS |
iPhone Mac iPad |
Apple Arcade | Apple Pay |
Android Chrome OS |
Pixel Chromebook Pixel Tablet |
Google Play | Google Pay | |
Microsoft | Windows Windows Phone(撤退) |
Surface | Windowsゲーム | |
Amazon | Fire | Fire | Amazon Games | Amazon Pay |
Googleは検索エンジンおよびネット広告、Amazonは本の通販、Facebookは大学における顔批評、Appleはパソコン(ハードウェア)、Microsoftはコンピュータソフトから始まり巨大化しました。
ちなみに日本の大企業グループの対抗馬といえば、ソフトバンク、NTT、KDDI、サイバーエージェント、電通、ソニー、楽天、イオン、NEC、富士通、オービックなど。
もしAppleが電気自動車を発売したらトヨタもGAFAMの競合範囲に入るように、GAFAMは業種の壁を超えて拡大しつつあります。
日本の大企業も子会社を含めたグループ単位として考えると業種は多様化していますけどね。
株式の時価総額でいうと日本最大のトヨタ自動車は40兆円台ですが、GAFAMは最下位のFacebookでも100兆円くらいはあります(2023年時点)。





GoogleプレイとアマギフとApple Gift Cardはインフラのごとく日本の各コンビニに浸透している
GAFAMの強み:人材は普遍的に通用するエリート
GAFAMの強みはよくも悪くも次の9コにあります。この9コは複合的であり、GAFAMに関する問題やメリットとも重なっています。
下記の箇条書きのうち矢印の右側は消費者や労働者にとってのメリット
- 世界中に大きなブランド力が認知されている
- GAFAMは人々の自由な選択によって大きく成長した(中国のIT産業は中国政府が外国のITサービスを締め出した環境のもとに中国国内で圧倒的なシェアを得ているのとは対照的)
- 新しくてまだ小さな事業は社外ベンチャーにやらせてみて、よさげであれば豊富な資金力でもって買収する(ライバル企業も減る)
- 失敗も結構あったが早期撤退や大量解雇によって業績回復(Google+、不自由な中国市場からの撤退、90年代の暗黒Apple、Windows Phone)
- 英語圏中心の企業だから市場規模が大きいし、人材や資金の獲得面でも有利
英語圏の勝ち組企業だから有能な人材を確保しやすい
- プラットフォームとして広く定着した(みんなが使っているから私も使う)
プラットフォームは多くの人が集まるほど使いやすくなる(規格乱立より規格独占のほうが使いやすい)
- 巨大企業になっても攻めの姿勢堅持
GAFAMへの株式投資はこれまで手堅く儲けることができた
- 優れた顧客体験は普遍的に通用する
使い心地はシンプルであり外見も洗練されている
- データ、とくに個人情報を大量に集めて利用する
GAFAMは低コスト体質であるなど儲かっているからこそ消費者は安く使える(ユーザーが無料でとれるアカウントが起点になっている)
GoogleとFacebookは無料でのサービス利用が、AppleとAmazonとMicrosoftは有料でのサービス利用がビジネスの起点になっています。
GAFAMブランドのハードウェアは基本的に自社工場でつくっている比率が低いと見られます(時代や会社によって比率は違う)。これも一種の強み。
ファブレスといえるかまでは微妙ですが、委託生産率は高めだといえます。
次に下記はGAFAMの一部に当てはまる強みです。
- ITサービスが包括的(一か所でいろいろそろう)
Amazon(とくにAWS)、Apple(各種端末と各種OS)、Google(検索エンジンとクラウド)、Microsoft(PC向けソフトとクラウド)
- 同期化が便利(端末が違っても設定を受け継げる)
Google、Apple、Amazon、Microsoft
- さまざまな国の政府とクラウドを契約している
Google、Amazon、Microsoft
- 巨大かつ閉鎖的な中国市場で排除されていない
Apple、Microsoft
- プレゼンやCM動画がうまい
Apple、Google
- カリスマ性が大きい創業者が去ると会社は劣化するという説があるが、劣化はほとんど感じない(創業者が生み出したモノが素晴らしすぎたから今でも経営は悪化しない?)
ジョブズとApple、セルゲイブリンとラリーペイジのGoogle、ビルゲイツのMicrosoft(Googleだけは生成AI時代の過渡期で苦戦しているかも)
- 外部の企業や個人にコンテンツ(アプリや記事、画像)を自発的につくってもらい、それをもとに利益を生み出している
Google、Apple、Facebook(インスタグラム)
- 検索エンジンやSNSの使用は基本無料だから使い始めてもらうハードルが低い
Google、Facebook、Microsoft
- 業務の自動化(ソフトウェア産業は人件費の割合が大きいから自動化できるほど利益率は上がる)
Google、Amazon、Facebook、Microsoft
- 無駄を省いた製品・サービスを広めた(個人は部屋が片付くし企業は管理負担が減る)
Apple、Amazon
- 企業側は個別商品を積極的に宣伝しなくても、YouTuberやガジェットブロガーが自発的に取り上げる(とくにMacは広告案件が少なくて有名なように広告費が抑えられる)
Apple、Amazon
MicrosoftのWindowsやGoogleのChrome OSはMacも含めたさまざまなPCに搭載できますが(GoogleのAndroidも同じような構造)、macOSはMacにしか、iOSはiPhoneにしか搭載できません。
その意味では、MicrosoftやGoogleは開放的である一方で、Appleは閉鎖的だといえます。Appleはアプリの審査も厳しめ。
ちなみにAmazonは多様な業者が利用していますし、Fire OSはAndroidベースでつくられているように開放的です。



『西遊記』で孫悟空はお釈迦様に自らの強さを誇示して遠くまで飛んで行ったが、それはお釈迦様の手のひらの範囲にすぎなかった:現代人もGAFAMという5本指から逃れられないのかも。
GAFAMの弱み・問題点
次にGAFAMに共通した社会的な問題点を整理すると以下のようになります。
- 各国の有能な人材や投資資金はGAFAMに流れてしまいやすい
- 業務の自動化がすすむほど労働者は不要になる
- 外資の私企業が各国の個人情報を大量に保有して営利利用するのは脅威に感じられる
- 言論統制の可能性(GAFAMは利益追求のイメージが強いが意外と言論を制限するところもあるし、原因を教えてくれるとは限らない)
- よくも悪くも訴訟が多いように、GAFAMに対する公的な規制が強まるのかも(米国政府や欧州委員会との大型バトルも目立つ)
- 税金逃れ
- 独占による不当廉売の可能性(不当廉売のあとは不当に価格が上がる場合あり)
- GAFAMが製品規格やサービスの手数料率、検索アルゴリズムを変えるたびに多くの企業や消費者は振り回される
- Appleによるアプリ審査は厳しいが、Amazonでは粗悪な中国製品が売られていることがあるし
- Google・ouTube、Facebook・インスタでは詐欺広告もよく表示される(とくにメタは詐欺広告への対応が遅くて有名だし企業イメージは悪化する)
- ゲーム分野はプラットフォームはあっても直接的な開発力はあまり強くない
- 無駄が省かれることで壊滅する業種がある
- GAFAMは超有名かつ超大企業であるため、設備や幹部は悪人から狙われやすくセキュリティにかなりの費用がかかる(ザッカーバーグ氏への個人的な警備費用だけでも年間20億円にものぼる)
- 自前の設備としてモバイル回線・ネット回線事業には進出していない(テストならあるし、他社設備を借りての参入は今後あるかも)
- 中国のリスク(経済制裁、不買運動、生産遅滞)、中国のBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイという中国4大IT企業)が脅威
IT業界は「Winner take all(勝者がすべてもっていく)」という構図になりやすいです。
これはPC分野のOSではMicrosoft、検索エンジンではGoogle、スマホ端末ではAppleがあてはまります。
まあGoogleの牙城はAIによって揺らいでいますけどね…。
ちなみにGAFAM個別の経営的な懸念は以下のとおり
- Google
Google検索よりもSNS検索が強まりつつある(あるいはChatGPTのようなAIに直接聞くことでGoogle検索を経ない方法が進むかも)(Bingにシェアを奪われるかも)
- Amazon
妙な中国製品や中古品を不信に思う人が増えている
- Facebook
TikTokとの競合、そして広告収益の大きな下落
- Apple
iPhoneやMacは保守化しつつあるがジョブズ氏やクックCEO級の後継者が現れるのか(NVIDIAとの関係も修復したほうがいいかも)
- Microsoft
Officeソフトは安い代替品が増えている
- GoogleとFacebook
ネット広告を強制的に表示させない技術が普及しつつあるから広告収益部門はヤバイ
- GoogleとFacebook
顧客対応が悪い(GoogleやFacebookが整理するコンテンツは外部のユーザーがつくったものが多い)(そのコンテンツ量はすごく多いし、AIに任せている割合が大きいから対応に不満が残る)
- AppleとMicrosoft
中古市場が活性化しているように「スマホやパソコンは高価な最新型を買わなくても大丈夫」と考える人が増えている
- GAFA
Googleの自動運転、Appleの電気自動車、Facebookのメタバース、Amazonの不動産といった新規事業はうまくいくか
GAFAMの金融事業はまだ存在感が小さいですが、いずれ大きくなるでしょう。

夜、iPhone12ナイトモードで撮ったDELLの写真(スマホカメラとしては十分な画質に見えるが…)
GAFAMの人材は有能だがそこに流れすぎるのは困る
まずは人材について。
GAFAMはアメリカ本国以外にも拠点をたくさんもっていて給与水準も将来性も高いですから、世界中の有能な大卒者がこぞって応募してきます。
とくにアメリカ本土は巨額の大学寄付金にも見られるように、世界中の人材と富が集まってくるところに強みをもっています。
Amazon倉庫の現業職はいろいろ厳しいといわれますが、オフィスでホワイトカラーとして働くならGAFAMはとても魅力的なのです。




英語は開発にもセールスにも強い:GAFAは日本から生まれない
GAFAMはアメリカ発のグローバル大企業であり言語別(第1外国語圏も含む)の売上としては英語圏が多いですから、従業員は英語使用率が高いながらも多様性が高いです。

プログラミング言語は英語っぽい
とくに彼らのサービス展開にとってなくてはならないソフトウェアのプログラミング言語は英語に近いため、英語ができる人は有利。
企業が人口1億人ちょっとの日本市場で成功するのと、人口20億人以上の英語圏で成功するのとでは企業規模が桁違いになるのは当たり前でしょう。
アフリカ諸国も文明が未開の割に英語ができる人はまあまあ多いですからGAFAMの進出もますます進みそうです。





GAFAMのサービスは普遍的に通用する
- Googleの検索エンジンやYouTube
世界100近くの言語に対応しており、中国の百度みたいな検閲は行わない
- Amazon
実体ある拠点をもっている国は20くらいだが、無形のサービスを受けられる国はもっと多い
- Facebook
途上国でも普及していて政治革命のキッカケにもなったし、Instagramを買収して若年層を取り込んだ
- iPhone
多機能なのに操作が簡単だしデザイン的にも普遍的に受け入れられるモノに仕上がっている
- MicrosoftのWindowsシリーズ
どんなパソコンメーカーのパソコンに入れても使える基本的なソフトウェアとして広まった
- Android(OS)
オープンソースとして広まった(他メーカーによる利用は料金がかかるパターンがある)
たとえば音楽の楽譜を見ると西洋の五線譜は普遍的にわかりやすいですが、日本の三味線の伝統楽譜は身内にしか通じない暗号のよう。
GAFAMの産物といい、欧米人は普遍的に通用する産物をつくるのが得意です。
AppleやGoogleはプレゼンもうまい
- この動画を見た人は「私も買って体験してみたい」とワクワク感に駆られる
- 商品単体だけを売り込むというより「Appleの世界観」という形で売り込んでいる
- 部品単位に分解されたり、CPUだけがアップになるなどガジェットオタクが好む映像が随所に出てくる
- 日本メーカーは日本市場でしか通用しないようなCMが多いが、AppleやGoogleのCMは普遍的に通用する
- 日本メーカーのCMは美男美女の日本人タレント(製品知識は素人レベル)がサラッと製品を紹介するものが多いが、AppleやGoogleのCMはさまざまな人種が登場し熱く語る(Apple幹部も登場するように登場人物の製品知識はプロレベル)↓


たとえば日本の楽天はモバイルやカードについて芸能人のゴリ押し(商標連呼)だけで売り込んできますが、日本以外では通用しないでしょう。
日本のIT企業の問題は湿っぽい
基本的に日本のIT業界は厳しい解雇規制と複雑な多重下請け構造とややこしい人間関係によって停滞しています。
これに関して有名な実業家であるイーロン・マスク氏は「IT関連の技術革新はおもに若者が生み出す。高齢者は変化を好まないからITの技術革新を起こせない」と述べています。
日本企業は年功序列が残っており50~60代の人間が大きな権限をもっていますから(議員だと70~80代もいる)、日本企業がIT関連の技術革新を起こすのは難しいのかもしれません。



※YouTubeの日本語動画を日本地域設定で見ていると怪しい広告が結構流れます。
しかし、英語設定で英語圏の動画を見ると怪しい広告はほとんど流れません。もしかしたら日本人は欧米人よりも怪しい広告に引っかかりやすいのかも(ITリテラシーが低いからIT企業の水準でも欧米に負けている!?)。
※たとえば高速道路で制限速度超えの交通事故が起きたら、悪いのは高速道路をつくった人ではなく事故を起こした人です。しかし、日本は画期的なITソフトができてそれを利用した著作権違反が起きたときに「高速道路をつくった人も悪い」というような理論で天才プログラマーをつぶしたことがあります(Winny事件)。
悪いのは著作権違反をした人であってソフト開発者ではないでしょう。このプログラマーが若くして亡くなってしまったのは、Winny事件で大きなストレスを受けたことが主因と思えてなりません。
この天才的なプログラマーとビジネスがつぶされなかったら、今ごろ日本にもGAFA級の大企業ができていたかもしれません。警察や検察、京都地裁は日本経済の成長の芽を摘んだ罪を認識すべきです。
GAFAMは大企業になっても新規事業開拓:終わりなき多角化
日本の大企業の中にはすでに築いた利権・地位に安住しているだけで新たな成長を獲得しようとする姿勢に欠ける企業があります。
この手の企業の社長は普通のサラリーマンが出世した場合が多いです。
しかし、GAFAMは時価総額が100兆円以上になってもなお強気の攻めの姿勢を崩していません。
たとえばGoogleは自動車の自動運転、Appleは電気自動車やホテル事業、Amazonは保険や不動産、MicrosoftやFacebookはウェアラブル端末について攻めの姿勢を示しています。
とくにAmazonは売上は伸びているものの、利益は大して伸びていません。
なぜならAmazonは新規事業や新拠点の開拓に力を入れているからです。
Amazonは短期的な利益を出すことよりも、新規事業分野について自分たちが顧客から1番便利だと評価されることを優先しているのです。
大きな利益を得るのは先行者としての地位を確たるものにしたあと。
こういう長期視点での攻めの姿勢は目を見張るものがあります。
GAFAMはソフト関連で激しく競争している
GAFAMの攻めの姿勢に関してソフトウェア面では以下のようなシェア争いが繰り広げられています。
- 検索エンジンおよびブラウザ
Googleの1人勝ちに近いが、MicrosoftのBingとEdgeは抗戦している
- クラウド
1位のAWS、2位のAzure、3位のGoogle Cloudが覇権を争っている(AWSが優勢)
- パソコン向けOS
MicrosoftのWindowsの1人勝ちに近いが、AppleのmacOSとGoogleのChrome OSは抗戦している
- スマホ向けOS
GoogleのAndroidとAppleのiOSが勝って、MicrosoftのWindows Phoneは負けを認めた
- Officeソフト
Microsoftの1人勝ちに近いが、Googleはオンラインでの無料利用で抗戦している

ここまで攻めの姿勢が強い理由の一つは、GAFAMはオーナー色が強い企業だから。
オーナー色が強い企業だと創業家は大量の自社株をもっていますから株価が上がれば創業家の資産も増えます。
つまり、オーナー色が強い企業のほうが業績および株価を上げたがる動機付けが強いのです。
そのため株式投資では「大きく上がりそうな株が欲しいならオーナー企業の銘柄を買え」みたいなことがいわれるくらい。
Apple創業者のスティーブ・ジョブズ氏はすでに死去していますし、Microsoft創業者のビル・ゲイツ氏、Google創業者のラリー・ペイジ氏などはすでに退任しましたが、後任には攻めの姿勢が強い人物が選ばれています。
欧米の株主は攻めの姿勢が強い人物を好むため、そういう強い人物を社長に推したともいえます。
OSは買うという感覚が薄い:OSとゲームソフトの違い
たとえば任天堂のゲームソフトは、マリオ1、マリオ2、マリオ3…という形で売り出し、個々の消費者の自由な判断でその都度買ってもらうのが普通です。
任天堂の据え置き型ゲーム機についても、ファミコン、スーパーファミコン、64、ゲームキューブ、Wii、Switchなどと進化してきましたが、いちいちハードウェアを買い替えるのは面倒ともいえます。
したがって、ゲームソフト事業は中小企業でも一発逆転があり(ガンホーとか)大企業でさえも浮き沈みが激しいです。
しかし、PCやスマホのOSは基本ソフトですからPCやスマホを買った時点ですでにインストールされているのが普通(OSのライセンス料はPCやスマホの価格に含まれている)。
OSは新バージョンへの更新もできますから以前のOSを引き継ぎやすいです。
つまり、企業がゲームソフトを買ってもらうには消費者に積極的に行動してもらうしかありませんが、有力なOSは消費者に積極性がなくてもPCやスマホ購入のついでに買ってもらえるのです。
パソコンやスマホのOSはみんなが使っているOSを選ぶのが無難であるため、先行優位者であるWindows、iOS、Androidを脅かすのは難しいです。
プラットフォームビジネス
GAFAMの共通したブランド価値はプラットフォームとして継続的に使いたくなるためインフラと化することにあります。
※インフラとは基盤という意味。本来は道路、水道、電線などが具体的にあてはまります。GAFAMの場合は通信インフラと呼ぶべきかも。
プラットフォームビジネスとは、さまざま個人や企業が参加し、その参加人数が増えるほど企業価値や消費者にとっての魅力も増すようなビジネスのこと。
たとえばAmazonにはAmazon本体以外にもさまざまな出店者が参加したことで、多様な商品が並ぶ魅力的なショッピングモールになりました。
Amazonでは個人が自費出版としての電子書籍を売ることもできますからね。
あるいはGoogleやAppleのアプリ販売では、さまざまな個人や企業が開発したアプリがそろっています。
プラットフォームを運営する企業は、出店者や消費者に販売手数料を課することで収益をあげます。
プラットフォームビジネスの例
GAFAMの各サービス・商品はどれも「シンプルで快適な顧客体験」に重きが置かれており継続的に使いたくなるものばかり。
- Googleマップ
たとえば店舗経営者は店のマップデータに変更があったら自主的にGoogleに変更を依頼し、それをGoogleのロボットや従業員が適用するようにGoogleマップは集合知にもとづいている
- AWSというクラウドサービス
豊富なサービス、サービス同士の組み合わせ、コスパ、サポート体制、セキュリティなどの面でAWSが強い
- インスタグラムのようなSNS
英語圏も含めてキレイな画像が多数見れて楽しい
- Amazonマーケットプレイス
手数料を支払ってでもAmazonの巨大な販売チャンネルに便乗する価値がある
GAFAMのオンラインサービスはどんな母語の人にとってもシンプルで使いやすいです。
プラットフォームビジネスは個人や企業が参加すればするほど価値が大きくなりますから、みんなが参加しやすいように手数料は低めにおさえるのが基本(手数料が高いとほかのプラットフォームに逃げられる)。
でも、最近ではGAFAMが打ち出す手数料は高いという評価も耳にしますけどね。
独占とデータ蓄積と業務の自動化は一体的
次は独占とデータ蓄積と業務の自動化について。以上は一体度が強いです。
そもそもGAFAMは自社サービスの利用者についてアカウントの無料登録を迫っているように、膨大な量の個人情報を握っています。
たとえばGoogleは検索ユーザーがGoogleアカウントをもっていないとしても検索ユーザーの行動データを分析しています。
さらにGoogleはインターネット上にあふれる膨大なコンテンツ(文字、画像、動画)を集めて解析しています。ここではクローラーと自動巡回プログラム(AIロボット)が大活躍しています。
以上の膨大なデータをGoogleが配信しているインターネット広告に適用すれば、広告の内容と、それを買ってくれそうな個人との一致率を高めことができます。
たとえば最近のあなたがPC関連のコンテンツばかり見ていると、YouTubeやブログなどで表示されるGoogle広告もPC関連が多くなるんですよ。
しかもGoogleのネット広告は受発注も配信も「自動」によるところが大きいですから、従業員数の割に大きな利益を稼げます。
そうやって大きな利益を稼げば、新事業へも積極投資しやすいです。
つまり、次のような4連続コンボです。
- 利用無料の便利なサービス(検索、YouTube、ドキュメント、フリーメールなど)を展開して個人情報を大量に保有
- そのデータをネット広告に適用して一致率を高めつつ広告主から収益を得る
- 広告事業を自動化すれば人件費はあまりかからない
- 莫大な利益を新事業にも投資
Facebookの攻め方もこれに近いところがあります。
というのもFacebookで利用者は個人情報や個人の好みを登録します。Facebookではその登録個人に適合した広告が配信されますから広告単価も高い傾向にあります。

無料アカウント取得から始まる囲い込みビジネス
現代の日本人がオンラインでとる無料アカウントといえば、Yahoo!、Google、Apple、Microsoftです。
やはり、それらはフリーメールが簡単に取得できるうえに、ほかのさまざまなオンラインサービスを利用する際に便利ですから多くの人がアカウントをとるわけ。
たとえば上記はDMMアカウントにログインするときの画面であり、Google、Twitter、LINE、Facebookでもログインできる点が目を引きます。
こういったアカウントはPCとスマホとタブレットとでデータを同期できる点も便利。
DMMの電子書籍をPCで読んでいて、それを中断してスマホをつけるとPC版の続きから読めます。YouTubeでもこういう同期化はおなじみ。
ほかのオンラインサービス(非GAFAM企業)でも同じようなログイン画面はよく目にします。
とくにGoogleはフリーメールとYouTubeアカウントが使いやすいですからシェアも世界的に大きいです。
そうやって連携ログインはGoogleばかりに一本化すれば、他社でのパスワードの新規取得は減りますからユーザーによるパスワード管理も楽になります。
※Googleの場合、ブックマークや検索履歴なんかも同期化できます。パスワードの自動生成や自動入力もやってくれます。端末を新しく買い替えてもGoogleアカウントにログインするだけでデータをまるごと引き継げるのは便利です。
※日本の楽天にも無料アカウントとRメールというフリーメールがありますが、一昔前の楽天はスパムメールの攻勢が強かったためイメージがよくありません。
※DMMがAmazonアカウントに対応させないのは、DMMとAmazonはネット通販の面では競合するライバル企業だからでしょう。DMMのような小売業者の立場から見るとGoogleのほうが中立感が強いです。

最近ではAmazon系列以外でもAmazon Payで決済できる(Amazonにポイントやギフト券の残高をもっている人が多いからAmazon Payを採用する業者が増えている)


たとえばGoogle検索でスマホを選ぶ場合「スマホ、おすすめ」みたいな感じで検索し、表示された記事のうちどれかをクリックし、その記事の中からよさげな機種を選びます。
しかし、将来的にはAIに直接おすすめ機種をたずねることが普通になるかもしれません。これだと従来型の検索エンジンは不要になります。
ソフトウェア産業における規模の経済性

Apple本社
たとえば自動車をつくる際は、完成品メーカーがさまざまな部品を部品メーカーから調達して組み立てます。
このとき、完成品メーカーは部品メーカーに対して「一度に多く部品を買うから割引してよ」と持ち掛けるのが普通です。
またメーカーの規模が大きくなると、大量生産に便利な工業ロボットを多数導入できます。
つまり、メーカーは規模が大きくなるほど生産コストが下がるのです。これを経済学では「規模の経済性」といいます。
ハードウェアのメーカーは売上と従業員数が割と比例しやすいですし競合メーカーも現れやすいですが、ソフトウェア産業における売上と従業員数の比例度は製造業よりも低いです。
ソフトウェア産業では中枢にいるプログラマーの能力が重要であり、ソフトウェアの複製は簡単で安いため、ひとたびソフトウェアの地位を築いたら楽に大きな利益をあげられるからです。
とくに今の時代は実店舗に向かうことなくオンラインで何事も済ませられます。
このように収穫(利益)の増え方が加速的に増えることを収穫逓増といいます。それは「雪だるま式に増える」といってもいいでしょう。
GAFAMの成長はこのパターンにあてはまっており、インターネット拡大の恩恵を大きく受けてきました。
ソフトウェアの有力企業がひとたび地位を築いたら、他社にパクられないような著作権やライセンスの管理、悪意ある攻撃から守るためのセキュリティ向上(更新)のほうが重要になるといってもいいくらいです。
まあ最近ではGoogleが文書や表計算を無料で作成できるサイトを運営するなど、Officeソフトの優位性は揺らいでいるような気もしますけどね。
破壊的イノベーション:ミニマリスト時代との適合
GAFAMやネットフリックスはインターネットおよびミニマリスト時代とも適合して、それまでの時代の産物をいくつも廃止しました。
上の画像はビデオテープという記憶媒体。要するにDVDの前身みたいな位置づけのもの。
ビデオ系の記憶媒体は、VHS、VHS-C、ミニDV、8mm、DVD、HD DVD、Blu-ray Discなどと規格が変わってきましたから規格に対応するのが面倒でした。
とくにビデオテープ類は自宅の中でかさばりますし、早送りとか巻き戻しも面倒でした。たとえば2時間のビデオテープをすべて巻き戻すのに1分以上はかかりました。
しかし、ネットフリックスやAmazonプライムのようなオンラインサブスクなら、そんなビデオ類は持たずとも好きなときに好きな動画を見ることができます。
頭出しも実に楽ですし、テープ類を買う必要はなくなりました。
オンライン動画で最新の人気動画ランキングを見られるなんていう機能もインターネットがあってこそのものです。
Googleはオンライン動画に対する先見性があったためか、2005年に開設されたYouTubeを2006年の時点で買収して多言語対応を展開しました。
GAFAが省いたモノも多い:アマゾンエフェクトの功罪
昨今の各社のパソコン類は光学ドライブが標準搭載されなくなってきており、ソフトを買うならオンラインでのダウンロードが基本です。
これはAppleがMacについて光学ドライブや端子をできるだけ省いてきたことが影響しています。

←昔の音楽再生機はボタンの多さに魅力があったが、最近ではシンプルなデザインが人気→
ほかにも音楽系だと1990年代はCDが隆盛を極めていましたが、AppleはiPodを発売してCDという実体を買う時代から音楽データを買う時代を切り開きました。
Amazon Echo、Google Home、AppleのHomePodといったスマートスピーカーは音楽データと音声認識によってシンプルなデザインを実現しました。
Amazonの電子書籍はリアル書店をつぶした面もありましたが、紙書籍の非所有と電子書籍の普及に貢献しました。
昨今ではミニマリストやこんまりさんのような片付け・断捨離が流行しているように、GAFAはモノを大して所有しなくてもいい時代を先導したといえます。
ただ、AppleによるMac、そしてMicrosoftがSurfaceの端子数を絞りすぎているのは不便だという声もありますけどね。



iPodはソニーのウォークマンと競合した
GAFAMは華やかな大成功の裏で失敗も結構してきました。
しかし、カリスマ経営者を中心として大胆に事業撤退したり人員を削減したりすることで苦境を乗り切ってきました。
GAFAMはハードウェア面だけでなく経営面でもスリム化が上手いといえます。

ピピンアットマーク:Appleと日本のバンダイが共同開発して派手に失敗したゲーム機として有名

GAFAMのサービス・製品は多機能でも操作はシンプル
GAFAM製品は昔の家電よりもかなり多機能。
しかし、iPhoneは指1本とスクリーンだけ、Windowsはクリックばかり、Amazonはポチる、Googleは探したいキーワードを入れたらあとはクリックばかりというように操作はシンプルにできています。
昔のパソコンはDOSコマンドという小難しいコマンドを入力しないとすすまなかったのですが、GAFAMはシンプルなほうへと刷新したのです。


MS-DOSの画面
AmazonやGoogleのクラウドもミニマリストと関係している

現在は生産終了した東芝の外付けHDD
従来、人間がデータを保存するには外付けHDDやUSBメモリといったハードウェアを買って、その人が自己責任で管理していました。
しかしクラウド型のサービス、たとえばオンラインストレージは運営者がハードウェアやソフトウェアを大規模に導入し、ユーザーはネットを通じて保存したいデータを託し、運営者がデータを管理するという仕組み。
サービス利用者は利用に応じた料金を運営者に支払いますが、個人規模の利用だと無料部分もあります。
これは個人だけでなく世界中の大企業も利用しているサービス。クラウドを使えば企業でも個人宅でもIT関連の設備や管理負担を大きく減らせます。
この分野で世界最大手がAWS(Amazon Web Service)であり、GoogleやMicrosoftなども追随しています。

各社のおもなクラウドサービス | |
GCP Googleドライブ Gmail ドキュメント フォト |
|
Amazon | AWS |
Facebook Gaming | |
Apple | iCloud |
Microsoft | Azure Office OneDrive |
ちなみに一部のPCメーカーが発売しているChromebook(OSはGoogleのChrome OS)という機種はPC本体に保存できるデータ量が小さいです。
それゆえChromebookのユーザーはGoogleのクラウドサービスを使いやすいといえます。
GAFAMの問題点【メリットのほうが大きいの?】
ここまではGAFAMの強みについて述べてきましたが、ここから先はGAFAMの問題についても切り込んでいきます。
まずは独占について。そもそも独占とは一つの企業が市場を支配してしまうという意味。
独占に近い状態として寡占(かせん)という状態もあります。寡占とは少数の企業が市場を支配してしまうという意味。
確かにGAFAMの経済力は独占あるいは寡占といえる状態にあります。
たとえばGoogleは各国ユーザーからの自発的な(自由な)支持を受けているかに見えますが、その検索結果についてGoogleが関連する分野ではGoogle公式サイトを優先的に表示する仕組みになっています。
まあGoogleに限らず公式サイトが検索順位で強いのは当たり前ですけどね。
日本の検索エンジンは圧倒的にGoogleのシェアが高いため、インターネットに広告を出したい業者としてはGoogleに頼む場合が多いです。
もしGoogleの広告料金が不当に高いとしても、Google以外は利用しにくいのならGoogleを使うしかありません。
この手の現象はGAFAM全般にあります。
独占・寡占は不当廉売につながる可能性がある
Amazonはいまだに有望な事業者をいくつも買収していて市場の支配力を高めているため「独占・寡占」だと批判されやすいです。
Amazonの製品やサービスの価格は今の日本ではまだ高くないため批判されていません。というよりAmazonのサブスクは基本的に安いです。
しかし、Amazonがさらに独占力を高めたときに値上げするとユーザーはAmazonを使うしかなくなって値上げのダメージは広範囲で受けます。
市場独占と不当廉売で懸念されるパターン
- A社が不当に安く売る(競合他社はその安さについていけない)
- A社が競合他社を買収しまくる
- 消費者や出店者はA社以外の選択肢が少なくなる
- A社が値上げすると消費者や出店者はダメージを受ける
GAFAMによる変更は生殺与奪級のパワーがある
Googleの独占はサイト運営者にとって「生殺与奪」といえるほどに強力です。
たとえばGoogleで「転職エージェント、おすすめ」と検索したときに運営サイトが検索順位で最上位クラスに入ると、1か月につき数千万~億単位のお金を稼げます。
でも「転職エージェント、おすすめ」で上位に入るのはかなり難しいうえに、ひとたび入ったとしても一生安泰ではありません。
実際、日本のある上場企業が運営するサイトの検索順位が下がったために、業績が急落したなんていう出来事もありました。
上場企業の業績がGoogleのさじ加減によって億単位で上下しうるのは、よくも悪くもスゴイことです。
※美容院や歯科医院のようなネット検索して予約を入れるサイトもGoogleの検索順位が業績を左右します。
※個人ブロガーの中にもGoogleの検索アルゴリズム変更(検索順位の付け方が変わる)によって月収がそれまでの10分の1以下になった人がいます。
※ブロガーやネットビジネス企業は基本的にGoogleに逆らってもいいことはありません。そうやってへいこらしていると独占企業は調子に乗ってしまう場合があるのは問題。日本の電通もどうかと思います。
※インターネットが発展する前の時期で広告収益は大手の新聞社やテレビ、広告代理店などが得る割合が大きいものでした。しかし、Googleは個人のブロガーやYouTuberが広告収益を得られる道をつくって、大手メディアの牙城を崩した点は評価できます。

月額270万円もの利益が出ていたサイトが月額1万円ほどにまで急落して売却が検討された件




もしGoogleがYouTube広告について審査を強化すると、YouTuberに入る収益が少なくなるがゆえに動画投稿も少なくなるでしょう。
これでは視聴者も離れていきますから審査の強化は難しいものがあります。
Appleの変更によってFacebookは急落した
GoogleのほかにもApple製品の端子規格や手数料の変更、MicrosoftによるWindowsのサポート終了、Amazonによる販売ルール変更などは影響が広範囲に及びます。
AppleのブラウザであるSafariの初期設定としての検索エンジンはGoogleですが、AppleやAndroidスマホの一部メーカーはGoogleから切り替える可能性もあります。これだとGoogleの収益は下がります。
たとえばAppleのiPhoneは日本のメーカーも含めて多くの部品で成り立っており時価総額世界1位ですから、Apple製品の売上見通しが悪いと株価は広範囲で下がります。
あるいはAmazonには怪しい中国製品がありますから、ときには審査を厳しくして妙な商品を追放することも必要でしょう。


ちなみに2021年にはAppleがiOSについてユーザーのプライバシー保護を強くしたことによってFacebookは広告主によるユーザー追跡が悪化し、Facebookの収益と株価は大きく下落しました。
GAFAMの中でもたがいに生殺与奪級の変化があるのは興味深いです。
やはりGAFAMの中でFacebookはちょっと格下感があります。
価格転嫁は消費者にとって不利益
GAFAMは競合つぶしや企業価値増大のために、さまざまな企業を買収してきました。
一般に企業は規模が大きくなると保守化しやすいのですが、GAFAMは新興の有望な企業を取り込むことで過度な保守化を避けています。
GAFAMが買収してきた企業のほとんどは欧米の企業ばかり。英語圏が多いですが、ドイツやフランス、北欧の企業もぼちぼちあります。中国、韓国、シンガポール、日本といったアジア圏の企業が買収された例はかなり少ないです。
そして現在ではAmazonはマーケットプレイスでサードパーティから手数料を、AppleはApp Storeでの他社のアプリ販売について30%の手数料を支払うように設定しています。
GAFAMを利用するGAFAM以外の業者はほかに選択の余地がなければGAFAMを使い続けるしかありません。
たとえばAmazonマーケットプレイズの手数料がさらに高くなれば、マーケットプレイスに出店する業者は商品の値上げという形で消費者の負担へと転嫁します。
もし手数料の値上げ分を転嫁しないのであれば、業者は品質を低下させることで利益を確保するでしょう。
独占・寡占企業の方策として不当廉売があります。不当廉売とは過剰に安く販売して競合相手である中小企業を滅ぼしてから自分たちの利益を上げるという手法。
GoogleやFacebookの利用料は現状では安いor無料ですが、もし将来において料金を高くしたら「昔の低料金は不当廉売だった」と批判されます。
言論統制の問題:怪しさ排除を優先すべき?
Google、Facebook、Twitterにおいては陰謀論やヘイトスピーチっぽい言葉を残すと検索結果から排除されることがあります。
明らかなデマや誹謗中傷は排除されるべきですが、神経質なまでに排除されているところもあります。
とくにGoogleは大手の法人サイトを優遇して個人サイトを排除したがるように権威主義として有名です。

Amazonでも怪しい書籍は排除されることがあります。
Amazonが利益を徹底的に追求したいのならば売れる本はなんでも売ったほうがプラスになりますが、それよりも怪しさ排除を優先する場合があるのです。
本来、私企業がどんな本を取り扱うかは自由ですが、Amazonは超巨大企業であるため問題視されやすいといえます。
Amazonの本にしてもGoogle関連の言論にしても、もし凍結・排除されたら原因をきちんと教えてほしいものですが教えられるとは限らないのは問題です。
税金逃れは実態がつかみにくい
GAFAは巨額の収益をあげている割に十分な税負担をしないことが問題視されてきました。
税金逃れの手法としては税率の低い国やタックスヘイブン(租税回避地)を利用する方法が有名です。
IT企業は有形固定資産(工場や店舗)をあまりもたず無形資産(データや広告配信)によって収益を得ており、無形資産は拠点を移動しやすいため課税が難しいのです。
GAFAのビジネスモデルは消費者にメリットあり
GAFAの勢力伸張は日本企業にとって脅威ですが、GAFAは日本の消費者にとってメリットもあります。
- Google、Facebook
直接、彼らにお金を支払っている消費者は少ない(支払っているのはおもに広告主)
たとえばGoogleにはYouTube PremiumやGooglePlayへの課金(消費者がお金を支払う)という収益源もありますが、多くの日本人はGoogleにお金を直接的に支払っていないはず。
Googleは各ユーザーに自社のサービス(検索エンジン、YouTube、Gmailなど)を使ってもらい、その中に広告を露出させ、広告主から料金を得るというビジネスモデルだからです。
TwitterやFacebookが無料で利用できるのも、広告費を多く支払ってくれている企業アカウントがあるから。
Googleの無料サービスはビジネスモデルのおかげ
Googleのサービスは有料版もありますが、日本の個人は大してお金を支払っていないでしょう。
その代わりといってはなんですが、GoogleのユーザーはGoogleに個人情報を差し出しています。
Googleは個人情報を解析してネット広告配信で儲けているおかげで、ユーザーにGmail、ストリートビュー、オンラインストレージ、ドキュメント、スプレッドシートなどを無料で供給できるといえます。
これってかなり便利ですし、互恵関係にあると思いませんか。
ただ一方的に個人情報を吸い取られるだけだったら腹が立ちますが、Googleはいろいろなサービスを無料で提供してくれますから許せる余地も大きいです。


ソフトの規格はある程度統一されているほうが便利
MicrosoftのOS(基本ソフト)であるWindows、さらにMicrosoft Officeは市場を独占しているという批判があります。
しかし、OSやOfficeソフトが乱立していると互換性の問題が大きくなります。
たとえばあなたが他人にメールでMicrosoft Officeの添付ファイルを送る場合、相手もMicrosoft Officeをもっていないとファイルは文字化けする場合があります。
あるいは、もしOSが乱立しているとオンラインゲームの配信会社はいくつものOSに対応しなければならないなど面倒ですが、現代ではとりあえずWindowsにさえ対応すれば大きな問題はありません。
ブラウザについても乱立しているよりGoogle Chromeばかりに対応するほうが楽です。

つまり、ソフトの規格は統一されているほうがサイト運営者やソフト制作者、そしてユーザーにとって便利なのです。
動画配信者にとっても配信サイトはYouTubeばかりに専念するほうが楽。
ソフトの規格が統一されているとそのソフトの開発会社ばかりが儲かりますし、ネット犯罪者にとってターゲットが集中するという批判もありますが、ソフトの規格が乱立するのも考え物です。
たとえばGoogleに不具合が起きると、ろくな代替手段がなくてみんなが困るという欠点もあります(BingやDuckDuckGoはしょぼい)。
あるいは、もしGoogleがおかしくなって医療系の検索結果にデタラメなサイトばかりが表示されたら、人々の健康までも害されてしまいます(実際そういう事件は起きたことあり)。


「みんな使ってる」は強い:SNSも同じ
SNSについても乱立状態よりFacebookやInstagram、Twitterのようにどこか特定のSNSばかりが強いほうがユーザーにとって便利です。
なぜならSNSは基本的にユーザー数が多い(集まっている)ほうが面白いから。
もしSNSのシェアが均等に分かれていたらユーザー数が割れてしまいます。ユーザーが少ないSNSなんてSNSとしての意味がありません。
ユーザー数が多いSNSは運営企業にとって広告収益も高いですから、有力なSNSの運営企業は機能を充実させるだけの余裕があります。
これによって有力企業のSNSユーザーはますます増えます。
私のように運営ブログをさりげなく宣伝したい者としても、あちこちでSNSアカウントをつくって投稿するよりも、どこか特定のSNSばかりに投稿するほうが楽です。
OS、SNS、クラウドは集約的な利便性や互換性によって寡占に向かいやすいといえます。



プライバシー問題:個人情報の取得とその利用は日本企業も同じ
GAFAMはアカウント登録者の検索・閲覧・購入の履歴、名前や住所などの個人情報を蓄えたうえで、それをビジネスに生かしています。
こういった個人情報の取得とその利用は批判されやすいですが、世界中の企業のうちインターネットを使っている企業はみんな同じようなことをやっています。
GAFAMはその規模が大きくて目立つため批判されやすいだけでしょう。
国家権力並みの巨大圧力が対外制裁に役立つ
GAFAMは直接的な軍事力はもっていませんが、1社1社が巨大な経済力をもっています。
そこで2022年におけるロシアのウクライナ侵略でGoogleやFacebookはロシア国内でのネット広告収入を停止する措置を打ち出しました。
この広告停止措置によってロシア国内の企業や国民がプーチン政権に不満をもてば、それが侵略中止への圧力になるというわけ。
こういう措置は世界中にネット広告を配信している巨大企業だからこそ効果が高いといえます。
たとえばアメリカ政府がロシアに制裁するとロシア政府は「おのれアメリカ政府め、おぼえていろよ」と反感をもちますが、GAFAMのような多国籍の民間企業による私的な制裁ならそこまでの反感は出にくいです。

中東ではFacebookによって政治活動が活発化したように、SNSは国家権力以上に民間人の動きを活発化させるのかもしれません。