今回はYouTube(ユーチューブ)が人気化した理由、YouTubeの特徴、そしてテレビとYouTubeの違いを解説します。
ちなみに私自身はそれなりの閲覧数があるブロガーであり、商業出版本の著者であり、小規模のYouTuberでもあります。
一言でいうと、YouTubeはテレビとは多くの違いをもっており、この違いが動画配信者と視聴者を魅了しました。
※この記事でいうテレビとは録画視聴ではなく通常のテレビ番組をそのまま見ることを意味するものとします。
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- YouTubeはなぜ人気?ハマる理由【テレビとの違い】
YouTubeはなぜ人気?ハマる理由【テレビとの違い】
まずは視聴者視点で人気理由を見ていきましょう。
視聴者にとってYouTubeが面白い理由
- 人々の好みの多様化に合った、さまざまな専門ジャンルがある(テレビが大衆的なのとは対照的)
- YouTubeには大量の動画がストックされている
- テレビ放送が終わった深夜帯や、テレビが同じようなニュースばかりの時間帯でも自由に見れる
- YouTubeを見るのに通信料はかかるが、動画そのものに視聴料はかからない(有料動画も少し存在する)
- 大手のマスコミやアニメ配信会社、人気のアーティストや芸能人といったプロ勢も数多く参入して一層面白くなった
- テレビでは視聴率がとれなさそうなジャンルや企画でもYouTubeなら存在する
- 日本の場合、テレビ番組の内容やNHKの受信料制度がひどいから視聴者はYouTubeに流れた
- コメント欄が開放されていれば他の視聴者の反応がわかるから、それを見たくなる
- 10分くらいで見終わる動画も多いから手軽(0.25〜2倍速するのもよし)
- 娯楽動画だけでなく教育動画も充実しており、学校の授業より役立つなど教育費を合理化できる
- 語学の発音やリスニング、スポーツや料理の実演、パソコンExcelの操作方法、海外現地の雰囲気、化粧品の塗り方と仕上がり具合、芸術作品の制作過程はブログのような文字記事より動画のほうがわかりやすい(化粧品や画材などは発色具合がわかれば買い物の参考にもなる)
- ラジオ感覚でも使える(作業BGMにも使える)
- YouTubeで一定期間が経った動画は動画内のどこが見どころか一目でわかるし、そこまで一気にワープできる(YouTubeのほうがタイムパフォーマンスが高い)
- YouTuberが一方的にベラベラ話すタイプの動画編集ではジェットカットといって「あ~」「え~」、言葉が出てこないシーンをカットしているなど無駄のない凝縮された動画になっている(タイムパフォーマンス重視の人には受け入れられやすい)
- タイパ重視の人は映画や小説、ゲームストーリーなどの要約動画を好む
- 物事の裏側・裏話を打ち明けてくれる動画がある
- 派手なサムネイルを見ると、ついつい見てしまう
- インターネットだから海外動画も見やすい
YouTubeは巨大なストックから選んで見る方式
YouTubeには生配信もありますが、基本的にはYouTuberが投稿した膨大な量の動画から視聴者が自由に検索・選択して見るという形になっています。
その動画本数は外国語圏やショートも含めると推定50億本は下りません(削除動画も多いから総動画本数は流動的)。
つまりYouTubeは、選べる動画本数と好きなタイミングで見れることにおいてとても優れているわけ。
「YouTubeはつまらない」「YouTuberは素人っぽい、ガツガツしている」と批判する人もいますが、それだけ動画本数が多いと中には興味をひかれる動画もあるでしょう。
テレビ業界で活躍している芸能人やテレビ番組制作者が運営しているYouTubeチャンネルも今ではたくさんありますから。
YouTubeでは著作権違反の動画もある一方で、人気アーティストやアニメ会社は公式動画を無料配信しています。
一方、テレビは数チャンネルが放映している番組を見るだけですから、録画しない限り好きなタイミングで見れません。
ケーブルテレビ、衛星テレビ、海外テレビも入れると選択肢はちょっと多くなりますけどね。
ちなみに視聴者がYouTubeに不満をもつ点といえば、要点だけに絞った文字記事を読むより動画視聴のほうが時間がかかりやすい、詐欺にも見える情報商材広告、サムネイルと中身が違う釣り動画、嘘八百の動画、非合法行為をわざと見せびらかす動画、内輪ネタなど。
視聴者から見たYouTuberが人気の理由
- YouTuberは各自の専門分野における技量や知識がすさまじいから尊敬に値する
- YouTuberは各自の専門ジャンルではすごくイキイキとした楽しそうな表情を見せるから、視聴者は魅了される
- 普通の視聴者である自分にはできないような爆買いや大食いをなんなくこなすYouTuberは、自分にとって夢を実現してくれる貴重な存在
- 自分のYouTubeチャンネルは、内容はもとより、動画名やOP・ED、動画の尺などもすべて自分好みに展開できるから個人の魅力を引き出しやすい(テレビだと出演者共通の型にハメ込まれる)
- 技量や知識が未熟なYouTuberだとしても、その成長過程が興味深いし応援したくなる
- テレビの人物密着番組は『情熱大陸』のように有名な芸能人や一流職人が多いが、YouTubeの人物密着動画は一般人も多くて新鮮に見える
- テレビは広告主や関連省庁に忖度しやすいなど真実を隠しているところがあるが、YouTuberはテレビより本音を出しやすいから信用しやすい
- 配信者(YouTuber)と視聴者はYouTubeコミュニティやTwitterなどを通じてコミュニケーションがとりやすいから身近に感じられる
- 面白系YouTuberならちょっとバカバカしい企画もマジメにやってくれる
YouTubeなら自分の好き・得意ばかりを見せられる
たとえばテレビのクイズ番組にはお笑い芸人、落語家、俳優、アナウンサー、モデル、元アスリート、弁護士などさまざまな芸能人が出演しています。
芸能人でクイズ番組ばかりを専門にこなしている人はほとんどいないでしょう。
テレビ業界ではクイズ出演専業だけだと生計を立てにくいともいえます。
これに対してQuizKnock(クイズノック)というYouTuberグループの出演者はクイズのガチオタばかりで構成されています。
当然、クイズノックのほうがクイズへの知識も情熱も強いため、YouTubeでのクイズは出題〜ひっかけ〜回答〜オチまで工夫が凝らされており、クイズが好きで詳しい視聴者から見るとクイズノックのほうが面白いのです。
クイズノックのメンバーはテレビのクイズ番組に出演することもありますが、このときのクイズ形式や難易度は大衆的。
同じように、なかやまきんに君みたいな特定ジャンルに強い芸人さんは、テレビの大衆向けお笑い番組よりYouTubeで筋肉分野ばかりを専門的に出すほうが輝きます。
なかやまきんに君はテレビの大衆向けバラエティ番組にありがちなお笑いのフリートークより(おそらく彼は苦手な分野)、筋トレをしたり筋肉論を熱く語っているほうが面白いのです。
日本企業は総合職という「なんでも屋タイプ」を重視してきましたが、近年ではその道のスペシャリスト(専門家)を重視する流れに変わりつつあります。
こういった専門家に頼る傾向はYouTubeと似ています。
YouTubeは個人単位で見やすい
- YouTubeの登場は2005年であり、1家族でテレビ1~2台を共有して見る時代からスマホやPCを1人1台以上ずつ所有する時代と重なった
- スマホはカメラ画質が上がったし動画編集もできる水準になった
※チューナーとはテレビ電波受信機のこと
- 2000年代はネット動画を高速で見れるネット回線(光回線)の普及期でもあった
- ブログやTwitterなどに埋め込んで共有しやすい
さきほどのクイズノックのようなYouTuberはクイズ好きには面白くても、そうではない人には面白さが伝わりにくいという欠点もあります。
しかし、YouTubeが始まったのは2005年~であり、このあたりからノートPCや携帯電話⇒スマホなど個人単位で使う端末の所有率が上がっていきました。
居間で複数人でテレビを見るのとは違って、個人単位の端末で映す動画は自分一人さえ面白ければいいのですから、そういう専門チャンネルの拡大と相性がよかったのです。
テレビ番組をブログで共有するとほぼ違法ですが、YouTubeは違法動画や投稿者が共有したがらない動画であればブログに埋め込んで共有できるのもいいですね。
YouTubeが広まった社会背景
- 携帯電話⇒スマホの普及を通じて個人主義が広まった
- すでに東西冷戦は終結しており、海外に興味が出る時代になった(旅行・海外移住、語学、海外事情、海外の反応、外国の面白い人)
- 副業としてYouTubeを選ぶ人も増えてきた(出演だけでなく企画や編集も立派な副業)
YouTubeは動画投稿者からも人気
- YouTubeは動画投稿サイトとして動画投稿者からも人気がある
- 多くの動画投稿者がYouTubeに集まって競争する
- 競争に勝ち残った動画は視聴者にとっても面白い
YouTubeには上記のような競争と人気の因果関係があります。
以下はおもに動画投稿者から見たYouTubeが人気の理由。
- 動画投稿者は自分のペースで自由に動画を投稿していける
- YouTubeでは過去の動画も結構見られているように動画が資産化する(テレビは録画や再放送しない限り一度流れたらそれで終わり)
- テレビに出演するのはすごく難しいが、YouTubeなら出演や投稿は自由(YouTubeでも人気者になるのは難しいが…)
- YouTuberになる経済コストは低いから手軽にさまざまな人々が参入した
- 動画投稿者はYouTubeの広告収益や自分のリアルビジネス広報によって金持ちになれる夢もあるため動画を頑張ってつくった
- 投げ銭機能で応援してもらえる
- 無料動画で多くの収益を得るには多くの再生回数が必要だが、メンバーシップの会員数がそれなりにいれば、そこまで多くの再生回数がなくても運営は成り立つ
- テレビの出演料は安定しているが、YouTubeの収益はよくも悪くも上限も下限もない(世界トップクラスのYouTuberの年間収益は数十億円)
- 広告は自動配信が基本(自分で一定の設定はできるが、わざわざ広告を一つ一つ貼らなくていい)
- 自分の専門性さえ活かせれば学歴とかはなくても人気者になれる
- 自分の弱みやコンプレックスみたいなのも優れた動画ネタになる
- 動画の概要欄にはYouTuberのグッズや関連商品を買ってもらうためのリンクも設置できる(価格が少し割高でも熱心なファンなら買ってくれるから利益率は高め)
- 日本のマスコミは表現が政府規制と系列会社と広告主に縛られやすいが、Googleは外資系企業であるうえに広告の多くは自動配信であり、YouTube投稿者は一般人が多いから表現の自由が大きい
- テレビタレントは事務所に所属しており活動が慣習や契約に縛られているが、日本のYouTuberは事務所に所属していない人も多いし退所するのも表現の幅も自由度が高い
GoogleはYouTubeの仕組みをうまくつくった
YouTubeの運営は米国企業のGoogle(Alphabet)です。このGoogleは検索エンジンおよびインターネット広告の分野でも世界一の超大企業。
そしてGoogleで検索すると、普通の文字記事に紛れてYouTube動画もヒットします。
私が2006年にYouTubeを知ったのはGoogle検索でYouTube動画が見つかったからであるように、普通のGoogle検索からYouTubeに行きついた人は多いはず。
つまり、スマホおよびPCの普及と人々の検索行動とGoogleの検索シェアの高まりとともにYouTube全体の人気も上がったのです。
Googleの仕組みもYouTubeの人気を押し上げた
- アカウントをつくってログインして見るほうが便利だが、アカウント・ログインなしでもすぐに見られる仕組みにした
- 今では世界全体で80以上の言語に対応(精度はまだ不完全だが生成AI字幕もある)
- GoogleはAndroidスマホのブラウザをChrome、検索エンジンをGoogleにし、Android OSを世界中のさまざまなスマホメーカーが搭載できるようにした(これだとYouTube動画が検索にヒットしやすい)(Apple製品でも初期設定の検索エンジンはGoogle)
- 通常のGoogle検索でもYouTube動画がヒットする
- スマホに登録チャンネルの新着動画の通知機能をつけた
- Googleは各アカウントの視聴履歴とチャンネル登録先と高評価ボタン履歴を自動で解析し、その時々によっておすすめ動画を表示して視聴者になるべく多く動画を見せる(中毒させる)
- 再生回数や高評価数などを可視化しているから「再生回数がこんなに多い動画はどんな感じなんだろ?」と好奇心で見る人がいる
- 各ユーザーは自分の視聴履歴がわかるし、今までに自分が高評価した動画だけを表示させることもできる
- CM時間はテレビよりはまだ短いし、YouTubeプレミアムならCMなし
- ネットに接続できるテレビのリモコンやプリインストールアプリにはYouTubeがある確率はきわめて高い
外部性:コンプライアンスと表現幅の違い
コンプライアンスとは法令順守のこと。
日本の大手民放は上場企業でもありますからコンプライアンスにはうるさいです。
テレビ局は総務省と癒着していますしグループ会社や広告主への忖度が強いですから、それだけ報道や表現の幅は狭くなります。
一方、Googleは総務省とのしがらみが小さい新興の外資系大企業であり、YouTubeに動画を投稿するのはおもにGoogle外部の人ですから報道や表現の幅は広いです。
YouTubeで違法動画はGoogleから審査されたり権利者から訴えられたりしますが、少しの著作権違反なら許される風潮があります。
YouTubeには支離滅裂な陰謀論や都市伝説ばかりを専門的に語っているチャンネルがあることには要注意。
YouTubeとテレビの比較表
YouTube | 日本のテレビ | |
元締め | キー局 NHK 総務省 |
|
出演者の所属事務所の力 | 弱い | 強い |
制作側の人数 | 少ない | 下請けを含めて多い |
総チャンネル数 | かなり多い | 少ない |
動画1本の長さ | 投稿者の自由 (基本的に12時間まで) |
30分や60分などテレビ局が決めた枠 |
CM1回の長さ | 5~15秒が1~2本 (スキップ時) |
15~30秒が2~6本 |
動画を見れる時間帯 | いつでも (不定期配信が多い) |
深夜は基本的にお休み (定期配信が多い) |
送受信方法 | 固定回線(光回線、CATV回線) 無線で携帯基地局経由 |
テレビ塔⇒アンテナ(強力な電波の一方通行) |
スポンサーとの関係性 | ゆるい | きつい |
視聴者の熱中度 | 積極的、能動的 | 受動的、適当 |
テレビにあってYouTubeにないもの(日本の場合)
- 総務省の放送免許(参入規制)
- テレビ局と新聞社のクロスオーナーシップ(テレビ局と新聞社は同じグループ会社だからたがいに批判しにくい)
- 裏かぶり(裏番組への同時出演)はダメという業界慣行
- 24時間テレビ(YouTubeは12時間でいったん切れる)
- チューナー
- バーター出演
- 枕営業
- 出演料の未払い
- オリジナルの大作ドラマ(英語版ならあるがネトフリに負けている)
- スポンサー企業の不買運動(テレビは広告主が固定的で、YouTubeは広告主が流動的)
- レコード大賞やM1グランプリのような大型賞レース
- 紅白歌合戦のような視聴者数が毎年ものすごく多い生放送番組(視聴者数は約5000万人)
テレビ番組はBPOによって審査され、YouTube動画はGoogleによって自動的に審査されます。
ちなみにテレビ番組をネットで期間限定で無料で見られるTVerというサイトがありますが、あれは停止や早送りするとさらにCMが増える、せこい仕様。
YouTubeにあってテレビにないもの
- 再生回数は刻々と増えつつ表示される
- チャンネル登録機能
- コメント機能
- 高く評価ボタンとの高評価数
↑以上4つを見るとチャンネルの人気度がすぐにわかります。まあ信者にとっては評価が高くても、非信者には面白くない動画もありますけど…。
- サムネイルの存在
- 動画投稿後でもタイトルやサムネイルなどを変更できる
- 怪しい情報商材広告
- Googleから一方的に動画やアカウントを削除される可能性あり
- 発リンクで他サイトへ誘導
- 他チャンネルのおすすめ動画も自動表示
- 他チャンネルとのコラボ動画(テレビでもごくまれにある)
- スマホで登録チャンネルの新着動画を通知
- 1人で多チャンネル展開
- コミュニティ機能
- SEO(動画タイトルを工夫するなど検索上位に表示するための施策)
- CMカット
- CMを途中でやめるときはスキップボタンを押す
- Googleアカウントで自身のスマホ、PC、タブレット、テレビのYouTube視聴データを同期化できる
- 投げ銭
- 再生をずっと放置していると自動的に停止する
- 倍速再生
- 逆再生
- 字幕の自動生成(発展途上の機能)
- 動画内のセリフ検索(発展途上の機能)
- サーバー落ち
- ブログに埋め込んで共有
- ※投稿者の独断で動画を削除↓
たとえばYouTuberが間違った解説をして、それを視聴者から指摘されたとします。
この場合、YouTuber本人の独断で動画をさっさと削除できます。
こういう自浄作用はテレビにもありますが弱いです。
YouTuberがテレビに出演したがるのも、テレビは視聴率1%だとしても見ている人数はまあまあ多く(≒約100万人)普段テレビしか見ないような視聴者にも広くアピールできるから。
とくに日本のテレビはチャンネル数が少ないため、1%でも結構な視聴者数がいるのです。
テニス専門動画はテニス好きにしか人気が出にくいが…
たとえばYouTubeのテニス動画は以下のように実に豊富。
YouTubeの各チャンネルは個人~小規模法人の運営ですから、テレビのような大法人より視聴規模が小さくても経営は成り立つのです。
YouTubeのテニス動画の種類
- プロ同士の試合や練習風景
- アマチュア同士の試合や練習風景(年齢は10代~80代、技量は初心者~セミプロ)
- 全部で12種類くらいある各ショットのレッスン
- テニスの精神論
- プロ選手の裏話
- プロ選手の対談
- テニス用具の紹介
アマチュア同士の試合は、テニスのアマチュアで上達したい人にとっては意外と参考になる点は多いです。
外国人のテニスもなかなか参考になります。
YouTuberは1つのチャンネルでさまざまなジャンルを扱うよりも、特定のジャンルに特化したほうが有利になりやすいです。
もしYouTuberが別のジャンルを扱いたくなったらチャンネルをまた別に開設すればいいだけ。
YouTubeはさまざまな端末で見やすい
さきほどの箇条書きの専門的なテニス動画は、テニスに興味のある人には面白くても、テニスに興味のない人にはつまらないという欠点があります。
一家の映像機器がテレビ1台しかないとみんなで同じ大衆番組を見るしかありませんが、スマホのような1人1台端末なら専門的な動画を自分だけで楽しめます。
YouTubeはPC、スマホ、ネット回線の普及期と重なったことで爆発的な人気を得たのです。
PCやスマホでもテレビは一応見れますが、テレビを見るにはチューナーが必要ですし、チューナー設置はNHK受信料の徴収対象になるため、チューナーをつけたくない人も多いはず。
この点、YouTubeはチューナーなしで見れるのがいいですね。
YouTubeは個人単位で見やすい
YouTubeの動画は専門分化していますから、視聴者は自分の好きなジャンルについて熱心に見ます。
1990年代までの日本のプロスポーツは野球(とくに巨人戦)に圧倒的な人気がありましたが、いつしか巨人戦の地上波テレビ中継はなくなり、人々の好みはさまざまなジャンルへと分散しています。
YouTubeはさまざまなジャンルの動画があふれており、それは個人的端末(スマホ)や好みの個性化と対応していることもYouTubeの人気化の理由だといえます。
昔は絶対的な国民的アイドルがいましたが、みんなの人気が分散している現代で国民的アイドルは現れにくいでしょう。
とくにスマホの場合、画面が小さいためマルチウィンドウが難しいですし、モバイルデータ通信経由の視聴だとギガを消費しますから、自分の好きな動画を1人だけで熱心に見る率が高いです。
テレビは受動的:YouTubeの各チャンネルは小規模でも成り立つ
たとえばチャンネル登録者数が10万人のYouTuberがつくったオリジナルTシャツはユニクロのような大手実店舗では棚に置いてくれませんが、YouTubeを通じた通販ならビジネスとして成立します。
オリジナルTシャツの価格は多少高くても熱心なファンなら買ってくれるからです。
このようにYouTuberは広く浅く攻めるより、専門的な動画をつくるなど狭く深く攻めて自分に熱心なファンをつけることを基本姿勢とします。
YouTubeで投稿者は概要欄に何らかの発リンクをつけて他サイトに誘導できます。これによって利益も生み出せます。
一方、テレビ番組はYouTubeほど専門分化していませんし(=大衆メディア)、テレビという大画面でもって複数名で見ることが多いです。
自宅でのテレビは適当につけっぱなしという人も多いでしょう。
こういう受け身の視聴だとCM効果は低いといえます。
YouTubeの特徴:自動停止措置がある
ちなみにパソコンでYouTubeをつけて自動再生で一定時間にわたって放置すると(何も操作しない)、上記のように勝手に止まって見続けるか迫ってきます。
これはGoogleが広告主に無駄に多く広告費を支払わせないための措置。やはり、だれも見ていないのにYouTubeをつけっぱなしだと広告主に無駄な負担がかかりますから。
なおテレビ番組は運営者による自動停止措置はありません。
テレビという機器の機能としてユーザーがタイマーを自主的に設定して止めることはできるんですけどね。
出演者や設備の違い:YouTubeの自由度は高い
YouTubeに動画を投稿するにはスマホ1台があれば可能。
業務用テレビカメラは数百万もしますが、新型iPhoneなら10万円~でなかなかの撮影性能があります。
一方、テレビは総務省の許認可事業ですから法的な参入障壁はもちろん、機材や設備の価格もかなり高いです。
テレビ番組を自分で録画しまくれば自分なりに大量に動画をストックできますが、容量の面で限度がありますし、管理や設定が面倒でしょう。
さらにテレビ番組に出演するには芸能事務所に入所しつつ下積み修行を積み、テレビ局や芸能事務所から認められる必要があります。これはかなり大変。
もしテレビ番組に出演できたとしても、テレビ局の方針に沿っていなかったり、つまらないと出演部分は一方的な編集でカットされますし、人気が出ないと干されます。
要するにYouTubeはだれでも参入しやすいけど人気が出るかは未知数で(大量の玉石混交を供給して多様な視聴者に選ばせる形式)、テレビは出演できるまでに時間がかかるうえに継続的に出演できる人はごく一部に限られているということ(供給を意図的に絞っている)。
テレビはドラマに強みをもっている
テレビ局は、制作に大金と大物俳優とのコネが必要な大作ドラマに強みをもっています。
実際、YouTubeオリジナルの大作ドラマってあまり見たことないでしょう。
ロバート秋山さんによる国産洋画劇場『船と氷山』は面白かったですが、あれは『タイタニック』のパロディですからね…。
インターネットオリジナルのドラマでネットフリックスの評判が高いのは、会社自体が儲かっていて大きな費用をかけることができるからです。
YouTubeプレミアムには英語版オリジナルドラマもありますが、ネトフリ相手には苦戦しています。
分業度の違い:YouTuberがやるべきことは多い
参考:YouTube動画ができるまでにやること
- 動画ネタの企画
- 台本作成
- 撮影
- 切り継ぎ編集
- 字幕入れ
- 画像や効果音を入れる
- 最終チェック
以上は他人に委託できる部分もあります。とはいえ、とくに売れていない初期の頃は1人で担う量が多いです。
私も動画編集は何本もやったことがあり、20分の動画を編集する時間は3時間くらいかかります。
ジャンル、慣れ、こだわり具合によって動画編集時間は変わってきますが、それでも結構面倒です。
一方、テレビ番組の制作は出演者、経営者、企画者、監督者、編集者、撮影者、音声スタッフ、大道具・小道具、営業マン、宣伝者、事務所のマネージャーといった分業制が敷かれています。
YouTubeはスポンサーとの関係性がゆるい
一般に民放のテレビ番組には固定的なスポンサーがいます。
もし出演者が何かをやらかすと、関係者のだれかがスポンサーに謝りにいかなければならないこともあります。
NHKだけは受信料収入によって運営されているためスポンサーに配慮する必要はありません。
そのため、パチンコや保険といった民放が批判しにくい業界を批判しやすいはずなのですが、この特殊性は適切に生かされているとは思えないです。
一方、YouTubeで企業案件ではない動画の場合、Google経由の自動広告は具体的に何が表示されるかわかりません。
たとえば、あなたが投資ジャンルの動画を見ているのであれば投資関連の広告が流れやすいですが、それでも具体的にどの広告が流れるかわかりません。
したがって、YouTuberは企業案件の動画以外は特定企業に忖度する必要性も薄くなります。
つまり、YouTubeのほうがよくも悪くもスポンサーとの関係性が緩いのです。
YouTubeはスポンサーとの関係性が緩いがゆえにちょっと過激なことをいっても許される節がありますし、多少の過激さはむしろ動画再生数にとってプラスになります。
たとえば民放で金属(錆びた刃物や古びた硬貨)をほぼ無言で研ぐだけのテレビ番組はスポンサーがつきにくいはずです。
しかし、YouTubeなら金属を研ぐだけのチャンネルでも自動広告はつくように運営は成立します。
こういう無言の作業動画は外国語がわからない人にもわかりやすいですから、意外と海外需要があります。
広告の種類が違う
テレビ局の収益源といえば番組の合間に流れるCM。
大手民放はテレビ事業のほかに不動産事業とかネット配信とかも営んでいますが、メインはテレビ事業のCMです。
しかし、YouTube広告の種類は以下のようにテレビよりは多様です。
- 普通に流れる動画広告(視聴者の端末で流れるだけで収益が発生する広告)
- クリック報酬型広告(視聴者がクリックすると収益が発生する広告)
- 成果報酬型も少しあり(視聴者がクリックした先で何かを買ったり登録すると収益が発生する広告)
- 企業案件にもとづく動画もあり(特定の企業がYouTubeに対して「○○な感じで動画をつくって」ともちかけてできた動画)
広告とは違いますが、投げ銭によって大きな収益を得るYouTubeもいますね。
YouTubeは事務所との関係性がゆるい
この場合の事務所とは、出演者に仕事を紹介したり、出演者を育てる代わりに手数料をとるような組織のこと。
とくに日本の場合、テレビ出演者と事務所の関係は濃密かつ固定的。
バーター出演といってすでに売れている芸能人と同じ事務所所属で売り出し中の新人がセットで出演する現象も見られます。
事務所の移籍や退所・独立をめぐった争いは多いです。
一方、YouTuberとYouTuber事務所の関係性はかなり緩いため、人気者が早期に退所しても騒動になる率は低いです。
そのためYouTuber事務所を営んでいる上場企業は経営状態がまずい模様。
縦割りの度合いが違う:コラボの存在
たとえば日本の超有名YouTuberであるヒカキンさんと「はじめしゃちょー」はおもに面白系ジャンルを舞台に競争しているライバルです。
しかし、彼らはたまにコラボ動画も投稿しているように仲が悪いわけではありません。
このようなコラボ動画はさまざまなジャンルで普遍的に見られます。
一方、テレビ局は他系列のテレビ局とのコラボ番組をほとんどつくりません。
- 日本テレビ、読売放送、読売新聞系列
- TBS、毎日放送、毎日新聞系列
- テレビ朝日、朝日放送、朝日新聞系列
- フジテレビ、関西テレビ、産経新聞系列
- テレビ東京、テレビ大阪、日経新聞系列
さらにテレビ局は出演者の裏かぶり(裏番組への同時出演)を忌避するように、縦割り感とスポンサーへの忖度が強いです。
テレビ局は他系列とコラボすれば面白い番組がつくれるかもしれないというのに。
YouTubeの特徴:評価指標が多い
YouTuberは動画を投稿したら、またすぐに次の動画投稿だけを考えればいいわけではありません。
再生回数を伸ばしたいのなら今までに投稿した動画への評価を分析するなど反省する必要もあります。
YouTuberにとっての評価指標
- 再生回数
- 再生時間
- リプレイ回数が最も多い部分
- 1再生あたりの広告収入単価
- 離脱率
- いいねの数
- コメント数
- チャンネル登録者数
- 検索順位
- 被リンク数
- SNSでのシェア数やコメント率
テレビにも評価指標はありますが、YouTubeよりも少ないです。
テレビ局にとっての評価指標
- 視聴率
- 視聴占拠率
- CM離脱率
- 広告収入(NHKなら受信料収入)
- SNSでのコメント率
コメント欄はメリットでもデメリット:みんなの反応が気になる
YouTuberは投稿動画に書き込まれた視聴者からのコメントも分析します。
このコメント欄は視聴者から気づいた点が示されたり、投稿者とのコミュニケーションの場になります。
しかし、動画の内容によってはコメント欄が荒れることもあるでしょう。
コメント欄が荒れれば、その投稿者や商品のイメージは悪くなります。
投稿者にとってはコメント欄を閉鎖するという手もありますが、コメント欄が閉鎖されたままの動画というのは印象がよくありません。
テレビの生放送番組でTwitter(X)でのコメントを紹介するパターンはありますが、基本的にテレビは情報を一方向に流すことばかりで、YouTubeほどの双方向性がありません。
ちなみに私はMr.Childrenの『innocent world』やMy Little Lover『Hello, Again 〜昔からある場所〜』といった90年代の名曲でCDをもっていますが、YouTubeのコメント欄でみんなの反応を見たくなることがよくあります。
日本人は他人の反応をよく気にするように、エンタメの評判も気にする人は多いでしょう。
人気テコ入れ策の特徴
YouTuberは自分自身の動画周りをよく観察して改善したとしても、Googleから冷遇されると検索順位や、おすすめ動画に入る率は下がってしまいます。
検索順位やおすすめ動画に入る率が下がれば当然、再生回数も下がりやすいです。
この類の順位はGoogleによる緻密な計算によって成り立っています。この計算をアルゴリズムといいます。
アルゴリズムはGoogleによって大きく変更される可能性があります。これによってYouTuberは天国と地獄に分かれたりもします。
検索で上位になるには、視聴者の満足度を高めるということに加えて、動画タイトルと動画内容を合わせることが大事。
そのため、YouTuberは投稿後に動画タイトルを変えることもあります。
こういう事後的なタイトル変更はテレビではありません。
テレビの場合、人気のテコ入れ策としては不人気な番組を終わらせたり、不人気な出演者を入れ替えるという策がとられやすいです。