国境といえば、アメリカとメキシコの間にあるデカくて長い壁、日本海の国境付近を警備する海上保安庁の巡視艇、映画『ルパン三世 カリオストロの城』の冒頭でルパンたちが変装してくぐり抜けたような陸上の検問所などを想起する人が多いでしょう。
インターネットの国境は実社会の国境とは違った形で少し存在します。
基本的にインターネットの国境は実社会の国境より弱いです。
ちなみに海外絡みの禁止コンテンツはVPNという技術を利用したり、ファイアウォールの設定を変えると禁止されている国からでも閲覧できる場合もあります。
しかし、このあたりの攻略は国によっては違法性を帯びるところなので当サイトでは割愛します。
タップできるもくじ
インターネットに国境はない?
まずはインターネットで国境を感じにくい分野について。
国境を感じにくい場面
インターネットで国境を感じにくい典型は、YouTubeでは海外動画が見やすいこと。
外国人が多く見ている日本語動画だと外国人によるコメントも多いですね。
YouTubeの言語設定を英語にして英語で検索すれば英語圏の動画がヒットしやすくなりますよ。
自動翻訳の精度も以前より増していますから、外国語圏の動画はもっと見やすくなっていくでしょう。
あまり大きな声では言えませんが、日本国内で無●☆の画像や動画は刑法175条を根拠に禁止されています。
しかし、海外サーバーを経由しているとそういうものでも日本国内で閲覧できてしまいます。これもネットでは国境が希薄だから。日本のその規制はなんのための●☆なのか、わからなくなります。
インターネットに国境はある
次はインターネットで国境を感じる分野について。
インターネット国境の本質は実社会の国境のような物理的な壁ではなく、人間は活動のたびに「国ごとに」を意識しやすいところにあります。
TikTokは禁止されつつある
TikTokはおもに短編動画が投稿される中国企業運営のサイト。
TikTokは若者を中心に人気です。
しかし、中国共産党はTikTokユーザーの個人情報を不正利用しているとか、不適切なコンテンツがあるといった理由で先進国の政府は政府端末を中心にTikTokの利用範囲を制限しています。
中国は米国企業を追い出している
逆に中国政府はアメリカの有力な企業を追い出している面もあります。
たとえばGoogleは自由主義型の検索エンジンですが、中国共産党にとって自由な報道や言論は都合が悪いので、Googleを撤退に追い込みました。
そこには私企業の力を超えた政府レベルの国策・思惑がうごめいています。
Amazonについても事業分野によっては中国市場から撤退しました。
中国人はAppleのiPhoneは好きなんですけどね。
Yahoo! JAPANはヨーロッパで見られない
昨今のヨーロッパ(EU圏)ではネットビジネスやスマホ端末に対する規制が強化されつつあります。
とくにYahoo! JAPANはヨーロッパでの法令遵守は難しいとして、ヨーロッパでは見れない状態となっています。
ネット会員の適用範囲のズレ
たとえばAmazonプライムのような有料動画について日本で有料会員になっている人が日本国外に行くと、同じ動画を見るのに料金をもとめられる場合があります。
その人にとってアマプラの対象動画が見放題だったのは日本国内であって、日本国外での料金はまた別体系になるのです。
Amazonに限らず有料動画サイトでの新作映画の公開日程なんかも国によって違います。
公開する作品や日程は全面的な自由にするわけには行かないので、どこかに線を引くとしたら「国ごとに」になりやすいのでしょう。
有料ネット動画の公開作品が違う理由
- 国によってユーザーの好みが違う
- 国によって作品の権利体系が違う
あの有名なジブリアニメはネットフリックスでは国によって公開作品が違います。
海外では広告表示が変わる
広告のルールは国によって違います。これはインターネットの自動広告にも適用されます。
そのため、日本では表示されていたネット広告が海外では表示が変わる、あるいは表示自体がされないこともあります。
我々のようなサイト運営者としてもネット広告を配信するには、広告の貼り方や記事内容に関してルール順守を誓う必要があります。
このパターンで有名なのはタバコや酒に関する広告。タバコや酒の広告はインターネットであっても規制がかなり多いです。
オンラインゲームでPing値が高いとき
Ping値とは端末がデータを送信してから受信するまでの応答時間のこと。対戦系のオンラインゲームではPing値の低さがもとめられます。
このPing値はユーザーとサーバーの物理的距離が短いほど小さな値が出ます。
そうなると日本にいる人が海外サーバーを経由したオンラインゲームをするとPing値は高い数値が出てしまうのです。
これは国境というより日本は海外から離れている島国だということを実感する瞬間ともいえます。
もっと日本にもサーバーがあればいいのですが、それだと海外ユーザーは不満をもつでしょう。
海外株はネット経由でも短期投資に向かない
日本在住の日本人にとって日本株の取引手数料は、日本で人気のネット証券を使えばかなり安いです。
最近では日本株の現物取引なら手数料無料なんていうネット証券も日本では出てきました。
しかし、日本人が外国株を取引するのは基本的に手数料が大きいため、短期間に売買を繰り返す短期投資は向いていません。
日本人が外国株を取引するなら長期投資になりやすいです。
やはり外国株のように国外経由の取引となると手数料が大きくなりやすいのはどうにもなりません。
ネット世論は右傾化しやすい?
基本的に右翼はその国の伝統と国境を重視するのに対して、左翼は伝統や国境をあまり重視しません。
インターネットで形成される世論を見ていると、多くの国で世論はやや右に行きやすいといわれています。
インターネットは国境が希薄な世界観なのに、ネット世論が右傾化しやすいというのは興味深い現象です。
これがいいとか悪いとか価値判断を述べるとややこしくなるので、そういう傾向があるかもしれないと述べるにとどめておきますけど。
ロシアという国を基準に撤退した企業
ウクライナ戦争を契機として先進国の主要企業はロシア市場から撤退しました。
これはマクドナルドや丸亀製麵のような実店舗型ビジネスの企業だけでなく、GoogleやMicrosoftといったネットビジネス系の企業も撤退したことが印象的。
日本の消費者としても「カスペルスキー(大手セキュリティソフト)はロシア企業だからやめとこう」と思って使わなくなった人も多いでしょう。
現代人が経済活動する際に国を基本単位として区切ることは多いわけです。
カスペルスキーは日本やイギリスなどにも拠点をもっています。
ロシアはウクライナを包囲している気になっているかもしれませんが、世界経済からは孤立化させられていると感じます。
インターネットが使えない地域の置き去り感
インターネットを使うには光ファイバーという有線ケーブルか、電話回線か、基地局という施設が必要。
こういった設備を整えるには結構なお金がかかりますから、貧しい国はインターネットにアクセスする手段が乏しいです。
その意味では貧しい国はインターネット自体から取り残されている感があります。
現代ではスターリンクという人工衛星を経由してインターネットを使うこともできますから、僻地で設備が乏しくても人工衛星を利用するだけのお金さえあればインターネットは使えますけどね。