一般にデスクトップパソコン本体ケースの材質(材料、素材)はプラスチックと金属でできています。この場合、プラスチック部分の価格は安いのが基本です。
デスクトップのユーザーは本体の材質についてこだわりをもつ必要はありません。
デスクトップにおいては部品同士の間隔は離れていますし、冷却ファンも大きいですから放熱性も優れています。
さらにデスクトップパソコンは自宅やオフィスのどこかに固定的に置き続けるため、本体ケースの素材が重くて安い金属だったとしても問題を感じないからです。
しかし、ノートPCやスマホは持ち運びますし、薄い構造に精密部品が詰め込まれているため、素材の放熱性・難燃性や強度、重さ、たわみも気にする必要があります。
最近のノートパソコンは天板とキーボード面と底面とで材質が違うタイプも多いですが、今回の記事を参考にノートPCやスマホの材質の特徴を大まかにつかんでみてください。
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ノートパソコンやスマホの材質
材料価格 加工費 |
体積あたりの重さ | 耐熱性 | 強度 | 振動吸収性 | PCやスマホ以外の用途 | |
ポリカーボネート (プラスチック) |
安い | ◎ 軽い |
▲ | ▲ | ▲ | 旅行時のスーツケース |
ABS樹脂 (プラスチック) |
安い | ◎ 軽い |
▲ | ▲ | ▲ | テレビのフレーム |
カーボンファイバー (炭素繊維) |
高い | ○ 軽い |
◎ | ◎ | ◎ | 釣り竿 |
アルミニウム (金属) |
高い | ○ 金属の中では軽い |
○ | ○ | ▲ | 一円玉 |
マグネシウム合金 (金属) |
高い | ○ 金属の中では軽い |
○ | ◎ | ◎ | 自転車の軽量パーツ |
チタン (金属) |
かなり 高い |
○ 金属の中では軽い |
◎ | ◎ | ○ | 航空機 |
※上記はおもにパソコンやスマホの外枠(筐体、ケース)の材質。ガラスやアラミド繊維が部分的に混じっている外枠もあります。
※内部・部品の素材で上記表で挙げていない素材としては、シリコン、金・銀・銅、ニッケル、セレン、ベリリウム、ガリウム、パラジウム、ゲルマニウム、タンタル、マンガン、リチウム、コバルト、インジウム、コンデンサ、ネオジム、など。
※ポリカーボネートはプラスチック類の中では強度や耐衝撃性がかなり高いほうです。しかし、金属やカーボンと比べた表にすると弱く見えてしまいます。
※ポリカーボネートとABS樹脂を組み合わせた混合樹脂も多いです。
※アルミのような金属や合金が一定水準以上の衝撃を受けると、その部分は凹みます(すごく強い衝撃だと割れる)。一方、プラスチックが一定水準以上の衝撃を受けると割れます。
※アルミニウムやチタン系で大して塗装されていないノートPCの表面は微弱なレベルで電気が検出されることがあります(材質は金属でも塗装されていると検出されにくい)。これは体質によっては少しビリビリ感じます(Microsoftによると人体に害はない水準)。
一般にマグネシウム合金やアルミニウムでできたノートパソコンの総重量は軽いです。
マグネシウム合金やアルミニウムの体積あたりの重さはプラスチックよりは重いものの、丈夫であるためノートパソコンの構造を薄くしやすいからです。
さらに最近では高級スマホの外枠はチタンでできており、それによって従来よりも小型化しました。
一方、プラスチック類は金属より軽いものの、金属に比べて強度が弱いため、その分だけ厚めの構造になってしまいます。
アルミをはじめとした金属ボディのノートPCを手にもつと最初は冷んやりしていますが、起動から時間が経つとそれなりの熱を帯びます。
非金属系ボディのほうがそういう温度変化は穏やかです(スペックが同じ場合)。
素材と価格の関係
プラスチック類は金型に液体の樹脂を流し込むだけで大量生産できるなど素材価格も加工費も安いです。このように生産量が多いと販売価格も安くできます。
しかし、マグネシウム合金やアルミニウム、カーボンは素材価格がやや高いうえに加工費も高めです。
最近、一部のメーカーが発売している薄型・軽量のノートパソコンはそういった高い材料を使っているうえに、開発段階の設計も苦慮してます。
さらに生産量も少ないため、どうしても値段はやや高くなってしまいます。
たわみが発生しやすい条件
ノートパソコンは以下のような条件が重なるほどキーボード付近がたわみます。
- 外枠が樹脂製
- 厚さが薄い
- ユーザーの腕力や重さが強い
- 内部構造の補強が弱い
- バッテリーが劣化して膨張したために変形した
- 2in1パソコン(タブレットに変形できるパソコン)
たわみはユーザーの不満になりやすいです。
たわみの発生率や感じ方はユーザーや環境によって違いますが、一応知っておきましょう。
厚さと熱の関係
ノートパソコンにおいては各パーツを劣化させる熱対策も重要です。
ノートパソコンで熱が発生しやすいのは、
- CPUやグラフィックボードが高性能
- ゲームや動画編集など負荷の高い動作をしているとき
- ソフトやブラウザについて同時起動が多い
- 冷却ファンが弱い
- 長時間にわたる連続使用
という条件が重なったときです。
つまり、ノートパソコンの素材に放熱性が優れた金属を使っていたとしても、薄型で冷却ファンが弱かったりCPUがハイスペックだと熱はそれなりに高まってしまいます。
素材と色の関係
表面が金属系の素材だと、ヘアライン加工といって無数の横線が引いてあるような見た目になる場合があります。
あるいはカーボン素材だと、表面は炭素繊維が編み込まれた独自の模様になります。
ノートパソコンスタンドという金属と組み合わせる
樹脂製のノートパソコンは安いものの放熱性に欠けます。
しかしながら、アルミ製のパソコンスタンドを下に敷けばアルミの放熱性を間接的に得ることができますし、角度が上がって風通しもよくなります。
パソコンスタンドの価格は2000~4000円とお手頃であるためかなりおすすめ。
パームレストが木製のノートパソコン
ノートパソコンの材質は金属やプラスチックばかりではありません。
なんとHPはキーボード面のパームレスト部の表面に本物の木材を使った製品も発売しています。
木材の種類としては、ナチュラルウォールナット(くるみ)、ホワイトバーチ(白樺)があります。
木目パソコンは温かみのある見た目であり、木目はすべて違うため個性を出すこともできます。
リサイクル材料も使われている
HP(ヒューレット・パッカード)やDELLといった大企業はリサイクルにも積極的になりつつあります。
なかでもHPはプラスチックのリサイクルに熱心で、すでに一部製品にはリサイクルしたプラスチックも組み込んでいます。
環境対策に熱心な企業のパソコンを買ってみるのもいいでしょう。
合金製やカーボン製は樹脂製よりもお得か
筐体が合金製やカーボン製みたいな丈夫な素材でできているとしても、ストレージ、コンデンサ、電源といったパソコン内部の部品は数年の使用で壊れます。
デスクトップだと壊れた部品だけを交換しやすいのですが、ノートパソコンでの交換は難しかったり割に合わなかったりします。
もし、高い合金製やカーボン製を買ったとしても樹脂製と寿命が同じではコスパが悪いのです。
つまり「合金製やカーボン製は樹脂製よりもお得なのか」という疑問が出てくるわけ。
そもそも「筐体が丈夫でよかった」と思えるタイミングは、ノートパソコンを落としたりぶつけたりしたときに壊れなかった場合です。
ということは、ノートパソコンを持ち運ぶ頻度が高い人ほど筐体の丈夫さが活きるのであって、あまり持ち運ばない人は筐体の丈夫さにこだわる意味が薄れてくるのです。
部分的にはガラスも使われる
上記はDELLのXPSという機種。この機種シリーズの一部製品はタッチパッド表面がガラス製です。
ノートPCでガラスがもちいられる箇所といえばモニターだけに見えますが、ほかの部分にちょっとガラスが使われていることもあるのです。